月森 砂名さん
※プロフィール
奈良出身。同志社大学文学部卒業。
能、京劇、バレエなどダンス全般、ミュージカル、ストレートプレイ、ライブ、コンサートなど舞台写真を撮影する一方で、舞台制作や市川猿之助総合演出「ジンギスカン」で宣伝プロデューサーを務める。
2010年、平城遷都1300年祭では、能と舞太鼓と昆曲─日中の伝統芸能をアート映像と融合させる舞台【祝祭祀あをによし】を企画。プロデューサーを務める。
http://www.aoniyoshi.us/
また、幻想的なフォト・アートで京都市美術館、東京都美術館、国立新美術館等に出展、銀座ギャラリーなどで個展開催。舞踏とのコラボレーションで斬新な演出を行う。
さらに小説 with イメージフォトを電子出版(電子パピレスにて10作品発売中)するなど、意欲的に創作活動を続ける。
http://www.k5.dion.ne.jp/~sana_55/
2009年、特定非営利活動法人 Layer Box設立。文化と教育、伝統とICTをつなぎ、地域からの文化発信力を高めるなど、社会活動に力を入れる。
http://www.aoniyoshi.us/layerbox/
能、狂言、文楽、歌舞伎といった日本の伝統芸能。なじみのない人には敷居が高く感じられるかもしれませんが、最近では小学校の授業でも取り入れられたり、大人の生涯学習のカリキュラムとしても人気を博すなど、注目を集めています。今、各世代から熱い視線を集めている日本の伝統芸能の魅力について、プロデューサーの月森砂名さんにインタビューしました。
新国立劇場公演「如風〜inside of wind〜」大倉正之助 構成・演出 撮影:月森砂名
新しい学習指導要領では中学生に対する和楽器の習得が義務づけられ、それに合わせて小学校でも和楽器の導入が広がっていることはご存知でしょうか?また、ある地域では未就学児から18歳までの学生を対象に、能の舞台に立つお稽古を数ヶ月もの間、能楽の先生から受ける「体験学習」が行われました。子どもたちが一生懸命お稽古に取り組んだ結果、能の舞台に立つという素晴らしい成功体験を味わい、生活規範や集中力が身について心身ともに成長することができたようです。(補足ですが、高まった集中力のおかげで成績がアップした生徒も多かったそうです。)
「伝統芸能」とは、時代を超えて今の子どもたちにもその素晴らしさは十分伝わる、普遍的で色あせない魅力あふれるもの。ただ、それを伝えるべき大人たちに知識が足りないこともあって、その素晴らしさが子どもたちにあまり知られていないことが残念ですね。
日本の大切な古典芸能や伝統文化に対して関心を寄せる人は少なくなっており、従来の「人から人へ直接受け継ぐ」形では守り続けることが難しくなっています。そこで、文化そのものをハイビジョンや3D映像で録画してコンテンツとして保存し、奈良から日本中へ、そして世界へと発信してゆく新しいプロジェクトをスタートさせることにしました。1000年以上もの間、脈々と「口伝(くでん)」で受け継がれてきた伝統文化を最新のデジタルスキルで保存し、よりわかりやすい表現方法で次世代に伝えていく・・・また、それをインターネットで発信することによって、国内・外でもたくさんの人に見てもらえる・・・ICT(情報通信技術)というコミュニケーションツールを駆使することで伝統文化を守り伝える試みです。
京劇俳優:張紹成「三国志」より 撮影:月森砂名
いきなり能舞台を見に行く、というのは経験がない方には難しいかもしれません。私たちが撮影したコンテンツは「eラーニング」のプログラムとして家庭でも利用していただけるので、まずはママたちに古典芸能の醍醐味を気軽に楽しんでもらいたいですね。また、各学校や大学にネット配信するプロジェクトもスタートしています。興味を持った学生さんには実際に撮影に参加してもらったり、作品製作に関わってもらったり、授業の一貫としてその魅力を体験してもらっています。それらを世界中に配信することは彼らにとってもいい刺激となり、カンヌなど国際的な広告祭に大学から出品する計画も生まれました。
http://aoniyoshi.roundtable.jp/(「あをによしTV」)
「能」発祥の地である奈良で、2010年10月30日に「祝祭祀 あをによし」という舞台をプロデュースします。これは日本の能、舞太鼓と中国の昆曲を独創的な映像でつないだ総合芸術で、日本初、奈良発の試みです。時や国を超えて、今までにない画期的な舞台を作ろうと演者・スタッフ全員で心を一つにし、熱い思いを込めて作り上げました。いにしえの時代から受け継がれる古典の神髄と、ダイナミックで斬新な演出が一体化したこの舞台を、ぜひ生で体感して楽しんでください。